あけましておめでとうございます(フライング)!
動物研究員です。
動物園や水族館、博物館などにとって、干支にまつわる生きもの紹介は外せない恒例行事です。
巳年ならば、爬虫類のヘビに始まり、魚類のウミヘビ科、昆虫のヘビトンボなどなど。
私からは、巳年ならではのとびっきりの生きものを紹介します。
その名も「ジャグチボウズギス」‼
ジャグチ=蛇口。
ヘビのような口をしたクロボウズギスの仲間です。
「動物園なのに魚? しかも標本じゃん。」
そんな声が聞こえてきそうですがご安心ください。
魚も動物ですし、飼育記録はどこにもありません。
恐らく、世界中探しても標本すら展示されたことがないでしょう。
ではなぜ、この得体の知れない変な魚を紹介したいかというと、私が名付の親だからです。
正確にいうと、この魚の日本語の名前(和名)を提唱しました。
ジャグチボウズギスを提唱した論文
ジャグチボウズギスは、水深1000~4000mほどに生息する深海魚です。
この魚は太平洋と大西洋に広く分布していますが、世界から22個体、日本からはたった2個体しか報告されていない “超激レア深海魚” です。
骨や皮は非常に脆く繊細です。
初めて手にしたときは震えました。
食用にも観賞用にもなりませんし、おおよそ注目される機会のなさそうな深海魚。
しかし、この魚を研究していた私にとって、なぜか歯が内側に270°回転するし、なんかすごくかっこいいし、もっと注目されてほしい。
そんな願いも込めて(他の正当な理由もあります)、12年に1度注目されるように干支に関する名前を付けました。
あろうことか名付けたのは前回の巳年…。
苦節12年、ついにこのとき(巳年)がやってきたのです。
今年はきっと色々なメディアや水族館でジャグチボウズギスの名前を耳にするはずです。
私は今から来たる取材に備えています(来てっ!)。
現在、豊橋総合動植物公園内の豊橋市自然史博物館にて、干支の企画展にジャグチボウズギスも登場しています。
標本こそ展示されていませんが、詳しい解説や、希少なジャグチボウズギスグッズ、スケッチも展示されていますので、ぜひそちらも併せてチェックしてみてくださいね!
参考文献
・伴 和幸,髙見宗広,冨山晋一,福井 篤.2013.日本初記録のクロボウズギス科魚類ジャグチボウズギス(新称)Kali colubrina.魚類学雑誌,60 (2): 117-121.
・Melo, S. R. Marcelo. 2008. The genus Kali Lloyd (Chiasmodontidae: Teleostei) with description of new two species, and the revalidation of K. Kerberti Weber. Zootaxa 1747: 1–33.