普段仕事中に何気なく使っているけど、一般的では無い言葉、それが業界用語。これを、ガイドとかの際に使ってしまうと、お客さんにキョトンとされてしまいます。
業界用語というと、「行動展示(こうどうてんじ)」とか「準間接飼育(じゅんかんせつしいく)」のような専門用語が多いですが(この辺は検索すれば出てきますので今回は割愛)、このような明らかな専門用語の場合、気を付けて解説を加えるので支障ありません。問題なのは日常の業務の中で何気なく使っているけど、実は普段耳にしない言葉。それこそ気をつけたい真の「業界用語」です。そんな通な(?)単語を少しご紹介。
個体(こたい)・・・液体、気体の固体ではなく、個体です。個体差、野生由来個体、個体管理、個体識別のように使います。種に関係なく、動物1体を指す時に使う言葉です。辞書には載っているようですが、普通は使いません。ニュアンスの近い一般的な言葉だと「個人」といったところでしょうか。
放飼場(ほうしじょう)・・・文字だと意味が分かりやすいですが、言葉で聞くと「?」となりそう。動物達を放し飼いする場所、要するに開園時間に出ている場所になります。「ほうし」と入力しても変換されませんので、PCで入力する場合「はなしがい」と打ちましょう。え、使わないって?
BL(びーえる)・・・ボーイズラブの略ではありません。ブリーディングローン(Bleeding Loan)の略です。動物園間で、動物の所有権はそのままに繁殖目的で動物を貸し借りすることを、ブリーディングローンと言います。長いので略してBL。私のPCには「BL報告書」や「BL関係」フォルダがありますが、全てブリーディングローンの方です、もちろん。
専門用語ではなく隠語(警察の「ホシ」とか「ヤマ」のような)もあります。例えば、鳥の羽根が生え変わる「換羽(かんう)」のことを「トヤ(鳥屋)」と言います。最近はあまり耳にしませんが、年配の飼育員さんはよく使っていました。元は鷹匠さんの業界から来たそうで、換羽期の鷹を鳥小屋に収容しておいたことから、換羽=鳥小屋(とりごや)=鳥屋(トヤ)と言うようになったとか。お知り合いに、どや顔で教えてあげてください。
最後に、豊橋総合動植物公園でのローカル業界用語、というか方言を紹介。新しく来た動物を群れに入れたり、繁殖期に雄と雌を一緒にしたりする、「同居」とか「ペアリング」のことを、当園ではなぜか「ミックス」と呼ぶ習慣が続いています。「それは方言だよ」とちょいちょい指摘していますが、いまだに使われています(学会発表の際は、使わないでね)。余談ですが、ちょっと西にある某動物園では、寒い日とか暑い日等に寝室と放飼場の扉を開けたままにして、動物が室内外を行き来自由にしておくことを「イケイケ」と言う、と昔耳にしました。「開けっ放しだよ」とか「出入り自由にしてあるよ」と言うよりも「今日はイケイケだよ!」と言うと、なんだか明るい気分に!?豊橋でも使いましょう。
獣医師K