みなさん、明けましておめでとうございます。のんほいパーク公園長の瀧川です。
未だコロナ禍は鎮静には程遠く、国内の移動や海外への渡航も制限される中で、
動物園では、なんとか、いつもと同じ新春を迎えることができたことを、感謝するばかりです。
さて、新春のブログとして、今回は、動物園の飼育動物の幸せについて、考えていきたいと思います。
飼育動物の幸せとはなんでしょうか?
私たち人類は、高度に進化した生命体であるがゆえに、衣食住が足りてれば幸せというわけではなく、
精神的な満足度も幸せの大きな基準になっています。
その尺度を、進化の過程の様々な枝葉にいる動物たち全てに当てはめることは難しいですが、
例えば、飢えや、痛みや、拘束される不自由さなどは、どの動物にも当てはまる辛さであり、
どの動物も等しく軽減することが求められる案件です。
いわゆる動物福祉の考え方では、5つの自由(フリーダム)が基本とされています。
1.飢えと渇きからの自由
2.不快からの自由
3.痛み・傷害・病気からの自由
4.恐怖や抑圧からの自由
5.正常な行動を表現する自由
今、動物園では、この動物福祉の考えのもと、飼育環境の見直し、
各種エンリッチメントや、ハズバンダリートレーニングの試みが進められ、
より野生化に近い環境や人間の関与の少ない日常の実現を目指しています。
しかし、例えば、飼育動物にありがちなことですが、単独飼育ゆえに、
心の支えを飼育員に求め、人間に依存してしまうケースや、野生を知らず、
人間に育てられたゆえに、自分が人間の仲間であると思っているケースなど、
個の幸せを考えれば、人間の関与が不可欠となる飼育動物もいます。
当然、それは、単独飼育の解消などで、改善されることなのですが、
現実はそううまくはいかないことのほうが多いのです。
大切なのは、個々の命を、私たちと同じかけがえのない命として扱い、
尊厳の中で対等な関係を持ち続けること、そして、野生種としての幸せはもちろんのこと、
動物の個の幸せについてもしっかりと向き合ってあげることなのです。
動物園は科学をするところでもあり、動物への豊かな感情の発露を受け止める場所でもあります。
お客様の動物個々への想いは様々なものがあるでしょうが、命というものに対しては、
順位はなく、どの命も等しく尊いものです。
職員だって、個々の動物への想いは様々なものがあります。
時々、その思いが突出してしまう場合もありますが、飼育する責任において、
バランスをとって相対すること、それが、飼育動物全体に等しく幸せを届ける方法であり、
私たちの重要な責務ではないでしょうか。