ライオンへの屠体給餌

飼育員

毎週日曜日はライオンへの屠体給餌を行っています。

屠体とは食べるために処理された動物のことで、ここでは野生でとれたシカ肉のことをさします。なぜ野生でとれたシカをライオンへ与えているのかというと大きく分けて3つあります。

1.ライオンの退屈な時間を減らすため

2.有害駆除されたシカの命を無駄にしないため

3.野生動物と人との関わりについて考えるきっかけになってほしい

 

1つずつ説明していきますと、

1.ライオンの退屈な時間を減らすため

普段与えているお肉はすぐに食べ終わってしまいますが、屠体を与えることで採食時間が一気に増えます。

他にも屠体を食べることにより、休息する時間が増えたり、あごの力を鍛えられたりと良い効果は沢山あります。

 

2.シカの命を無駄にしないため

現在、野生のシカによる農作物の被害額は年間50億円以上になります。

(他の動物の被害額を入れると年間100億円を超えます)

人間の生活が困ってしまうので、シカを捕えますが、毛皮の利用や食べたりするのはたったの1割です。残り9割は廃棄というのが現状です。そのため命を少しでも無駄にしないようエサとして動物園のライオンに与えています。

 

3.野生動物と人との関わりを考えるきっかけになってほしい

シカ肉をライオンに与える際には、お客さんに野生動物による被害などの現状を説明してから与えます。説明を聞いたお客さんからは、

「シカ肉を食べてみようかな」

「シカがかわいそう、シカを捕らない方法はないのか?」

「野生動物にエサを与えてたな…」

などの声が聞かれました。

屠体給餌を通して、少しでも野生動物との向き合い方を考えるきっかけになればいいなと思います。

 

屠体を食べるスカイ

 

先日、東栄町にある屠体処理施設を見に行きました。

シカの命が少しでも無駄にならないよう専用に作られた施設です。

洗浄・解体する場所

 

低温殺菌する場所

 

シカの処理には洗浄→解体→低温殺菌→冷凍といった工程を経ます。菌やウイルスなどに気を付けるため時間と労力などがかかります。とても大変な作業ですが、命を無駄にしないため処理施設の方たちは協力し動物園に屠体が届きます。処理施設の方たちは本当にあたたかく、動物についても熱く語る人たちばかりでした。

また狩猟をされる女性の方にもお会いしました。その方は未だに止めさし(命を絶たせる瞬間)はつらいと言っていました。この仕事がなくなるのが夢だと…

それをしなければいけないほど現地の人たちの生活が困っているんです。

シカはただ毎日必死に生きているだけなのに、悪者にしてしまったのは人間です。

かつて日本にはシカを食べるオオカミがすんでいましたが、絶滅しています。

絶滅した原因は乱獲や犬の病気の持ち込みなど、人間が大きく絡んでいます。

そして今はシカが増えていて、そのシカをまた人間の手により命が絶たれています。

それでも人間の生活が困っているのも現状で…

どうしたらいいのでしょうか?

少しでも多くの人に知ってもらい、一緒に考えていければと思います。

毎週日曜日11時半から行っているライオンへの屠体給餌を見に来てください。

長い文章ですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

ライオン担当