豊橋の職員として働き始めて2年目に突入しました。なかよし牧場エリアで飼育を続けてきましたが、動物たちの面白いところがたくさん見つかり、新しい発見の毎日です。その中でも、私は今ヤギの魅力にはまっています。
- のんほいパークのゆかいなヤギたち
ヤギは10000~12000年くらい前に乳や肉をとるために家畜化されてきたと言われています。最近ではペットや除草用としてもヤギが活躍する場が出てきています。
のんほいパークには2022年11月現在17頭のヤギが飼育されています。体格や角の有無、体毛の色等、また首輪に名札がついているので、見分けやすいと思います。性格も様々です。人なつっこい子、超ビビりな子、落ち着いている子、不思議ちゃんなど。朝もぐもぐ広場に向かって走って出勤する「ヤギのかけっこ」では、さらに個性が光ります。スタートダッシュが得意な子、あとからのんびり歩いて来る子、ほかの子にちょっかいを出しながら走ってくる子、真っ先に道草を食う子など、本当に個性的です。
- 好奇心・食欲旺盛な性格が健康につながる!?
ヤギは好奇心が強いです。初めて見るものも、時間がたてば「なんだこれ?」と近づいてにおいをかいで調べます。安全であれば、特に何事もなかったかのように無視したり、触ったりいたずらしたりします。また食べ物にもよく反応するため、エサを使ったトレーニングもしやすいです。
この性格を利用して、現在体重測定のトレーニングをしています。今までの体重測定は、職員がヤギを抱えて、職員が体重計に乗るやり方でした。しかし、持ち上げられる重さに限界があり、ヤギも暴れたりするため、人にもヤギにも負担がかかっていました。そこで、トラで使っている体重計を借りて、体重計に乗ってじっとしていたらペレット(エサ)をあげるというトレーニングを、今年の4月から始めました。最初は怖がって体重計に乗らない、もしくは前足だけ乗せるというヤギたちがたくさんいましたが、今では「あの台に乗るとごはんがもらえる」と理解したのか、自発的に体重計に乗る子まで出てきました。おかげで1カ月に1回の頻度で全頭の体重を測れるようになり、彼らの健康管理に活かされています。
- 難しい面も…
こんな好奇心旺盛で個性的なヤギたちですが、群れを作るため力比べが日常茶飯事です。特に彼らの得意技の頭突きは容赦ありません。一方が逃げて決着が付けばいいですが、執拗に追いかけたり、便乗して一頭を数頭で追いかけたりする場合もあります。出産・育児や死亡で一頭群れから抜けただけでもパワーバランスが崩れ、仁義なき戦いが続く場合もあります。このような力比べの結果、どうしても強い子・弱い子ができてしまい、エサを十分に食べられなくなってしまう子もいます。弱い子に対しては、少しの時間ほかの子から離してエサをあげる等の対策をしています。体重測定を1カ月に1回行うようになったため、もし体重がガクンと落ちている子がいれば、獣医さんと相談して、診察してもらったりほかの対策をしたりするように気を付けています。
また、オス同士の争いは非常に激しく、また繁殖能力が高いため、メスとも離して一頭で飼育しています。のんほいパークには、まっすぐ上に伸びた角が特徴のポンと、白ヤギのモチがいます。どちらも破壊王で、いろんなものに頭突きするため、頭突きできないように、また頭突きされても壊れないように、いろいろ工夫を凝らします。このように、オスの管理でも頭を悩ますことがあります。
- 生まれて、そして死んでいく
今年の8月3日に、1頭の子ヤギが生まれました。私にとっては初めての出産立ち合いでしたが、出産当日、なかなか子ヤギが出てきませんでした。ヤギは比較的安産だと聞いていたので、どうしたらよいものか…。獣医さんと相談しながら、最終的には獣医さんに子ヤギを引っ張って出してもらいました。約2kgの真っ白なオスの子ヤギでした。長丁場の出産でお母さんのロロはぐったりしていましたが、子ヤギの声が聞こえると、すくっと立ち上がってこどもをなめ始めました。「母は強し!」と実感した瞬間でした。
子ヤギはポポと名づけ、元気にすくすくと育ち、今ではお母さんとあまり体格が変わらなくなってきました。ヤギの成長の早さにも驚きです。
そして今年の10月13日には、ミノというヤギが亡くなりました。12歳で老衰でした。マイペースで、ヤギのかけっこでも、一番後ろを道草しながら歩いてくるような子でした。1年くらい前からは、高齢ということもあり、若い子たちに押され気味でよく頭突きもされていました。亡くなる数日前には、頭突きで倒されて起き上がれなくなってしまったことが何度かありました。高齢個体の管理も難しいなと感じる出来事でした。
- ヤギのおもしろさ
身近な家畜でもあるヤギですが、動物園で働くまでこんなに面白い動物だとは思いませんでした。個性的で、好奇心も食欲も旺盛で、そしてちょっと困らせることもあるヤギたち。最初は頭突きされて青あざをたくさん作りましたが、徐々に距離の取り方や彼らの怒りスイッチが分かるようになってきました。最近では「ヤギ間関係」に興味があり、ビデオ観察を始めています。これからもヤギたちの魅力を探していこうと思っています。