和鳥の豊橋

飼育員

みなさん、こんにちは。
私は、昨年、野鳥、レッサーパンダ、パタスザルの担当になりました。このブログは、大体1年に1回担当が回ってくるのですが、昨年のブログでは、長年担当を務めたなかよし牧場の担当を離れ、今の担当動物に移った心境を書きました。
あれから1年経ち、今年度も同じ担当をやらせてもらっています。

飼育員歴は、10年目ですが、担当動物が変わると新人同様に1から出直しになるので、この1年は、本当に濃いものでした。

今回のブログでは、私がこの1年で経験したなかで、一番びっくりした「豊橋の和鳥の繁殖技術」について、紹介します。私が、のんほいパークの飼育員になって、動物園の会議などで、各地の動物園のかたに自己紹介すると、「豊橋といえば、和鳥だよね!」や「最近、和鳥の話題聞かないけど、やらないの?」などと、声をかけてくださる方がたくさんいて、当時豊橋に和鳥のイメージがなかった私は、皆さんの言葉に新鮮な思いを抱いていたのを覚えています。

話は、戻りますが、昨年の初夏。
ふれあい牧場の担当だったころは、ちょうど3~5月の遠足シーズンがひと段落し始め、夏の暑さ対策に余裕を持って勤しむ季節でした。しかし、新しい担当に変わった途端、初夏はめちゃくちゃ忙しい鳥の大繁殖期シーズンに突入しました!野鳥園では、毎日ペアの鳥を観察して、オスメスの相性はどうか、巣作りは始まっているか、卵は産み始めているかを観察しなければいけません。昨年の6月は、やっと飼育している鳥の種類を見分けられるようになったくらいで、正直ペアの様子までしっかり観察できてなかったなぁと思います。加えて、繁殖計画に合わせて、冬までに過ごした部屋から、繁殖相手の部屋に鳥を移したりもするので、やっとその部屋の鳥の種や数を覚えた私にとっては大混乱な毎日でした(笑)その後、抱卵といって、親が卵を温め始めたら、日数をカウントして、孵化の時期を予想します。抱卵の時期を見極められないと、孵化日を逆算できないですし、孵化日がわからないとその後のヒナのケア(例えば、親が育てない場合には人工育雛で育てなければならないときもあります)ができなくなってしまいます。これは、鳥、特に小さな和鳥の飼育担当の大変なポイントのひとつです。
哺乳類であれば、大体の場合赤ちゃんが産まれれば、初乳を飲む姿から、赤ちゃんが生まれた事実を確認できます。しかし、当園の和鳥の場合、相手は、手のひらサイズの小鳥です。生まれたヒナは、手の第一関節くらいの大きさなので、ヒナが生まれたかどうかを判断するのはとても難しいです。
そして、無事、孵化を確認したあとは、普段、成鳥には、ミルワームという小さい虫を補助的にあげていますが、親がそれを雛に与えてしまうと、消化不良を起こしてしまうので、代わりにコオロギをあげます。それを、親がくわえて巣に運ぶのを確認できると、雛が順調に生育している証拠です。ちなみに、鳥の巣は、部屋の隅などの高いところにあったり、小さい木箱のなかだったりするので、簡単に日常的にはのぞいたりできないので、親や雛の状況を見て、大丈夫そうだなと思ったときに、はしごなどを使ってそーーーっと覗きます。雛が順調に育ってくると、今度は人工育雛の準備をします。

親が育てているのに、なんで人工に切り替えるの?と思う方もいると思いますが、実は、当園の和鳥は、「すりえ」というきなこなどの粉と青汁などを混ぜた人工のエサで飼育しています。これを親は、雛に運んでくれないので、このまま親に育てさせてしまうと、すり餌が食べられない個体になってしまいます。そのため、すり餌への切り替えのために、大体10日齢前後で、雛を巣から移動して、人工育雛を行います。もちろん、すりえを食べない種(カワセミとかカワラヒワ)に関しては、親にそのまま育ててもらいます。そのような形で、昨年は、カワセミ、ハクセキレイ、コウノトリの繁殖に成功しました。また、豊橋の繁殖技術を結集して、絶滅危惧種である亜種アカモズの人工孵化・育雛にも成功しました!

さて、今年は、どの種の繁殖に成功するでしょうか?

野鳥園で部屋にいる鳥をじっと観察する担当者をみかけたら、そっと一緒に観察して抱けるとありがたいです。