命がけの衣替え?

飼育員

今日の気温は35度です!朝のニュースでそう聞いても、今年の夏はそれが日常になり、驚かなくなったことが恐ろしく思います。今年の夏は雨が少なかったように感じます。天気予報を見たところ、やっとこれから雨が見られるようですね~

 

人間は暑くなったら服を脱ぎ、寒くなったら服を重ねることができます。汚れてしまった、古くなってしまった服は捨てて、新しい服を買います。簡単に衣替えができます。

 

一方で服を着ていない動物たちはどうしているでしょう?

基本的には古い毛が抜けて生え変わる「換毛」、鳥の場合は古い羽が抜けて生え変わる「換羽」を行います。

 

今回はちょうどジェンツーペンギンが換羽に入っているので「換羽」についてお話したいと思います。

ペンギンの換羽は1年に1回行われます。

防水機能が落ちたり、折れていたり、傷ついてしまった羽を変える必要があるからです。

のんほいパークでは、オウサマペンギン3月・フンボルトペンギンは7月・ジェンツーペンギンは8月・イワトビペンギンは9月頃に換羽に入ります。

ジェンツーペンギンの普段の姿

ジェンツーペンギンの換羽中の姿

 

普段とは全く別の姿となり、同じ種類とは思えない見た目です‼

 

古い羽が浮き上がってから、羽繕いや自然に落ちるのを待って、最後の羽が抜け落ちるまでだいだい15日ほどかかります。換羽は若い個体から徐々に換羽に入っていきます。ペンギンは長生きです。30歳超えることもある個体たちは皆と同じタイミングで換羽に入れないこともあります。換羽中は体力が落ちて病気になりやすいため、換羽に無事入れたか?無事終えたのか?全羽チェックしています。

 

また換羽中はプールにはいれません。羽がきれいに揃っていないため皮膚に直接水があたり、体が冷えやすくなってしまいます。そのため換羽前にたくさん魚を蓄えて、換羽中は絶食します。ペンギンは1か月分の魚を胃に蓄えることができます。魚をたくさん蓄えた体は、普段より1.5倍ほど体重が増えるんです。人間で考えると体重50㎏の方が1週間ほどの短期間で75㎏に増えるので恐ろしいですね。

体力を消耗しやすく、換羽中は魚も食べることもできないためまさに命がけです。

もちろん新しい羽に抜け替わった際には、たらふく魚を食べます。

換羽が終わった後は綺麗でツヤのある羽をしているので見どころです。

 

私が初めてペンギン担当したとき、掃除していた際こんなものが落ちていてびっくりしたのを覚えています。

 

今思い出すと恥ずかしい話ですが飼育1年目の私は、オウサマペンギンのクチバシが取れた⁉と心の中でパニックになっていたのを覚えています。確認したら、クチバシはきちんとついていました。これは嘴鞘(ししょう)と呼ばれ、オウサマペンギンは換羽の時期に嘴の板の部分の皮がむけて綺麗になります。

 

ちなみに換羽は、飼育員にとって一番掃除が大変な時期になります。のんほいパークでは20羽以上が同じタイミングで一気に換羽にはいるため、換羽の時期は毎日バケツ1杯分の古い羽を回収します。排水の穴が小さいためすぐ羽が詰まってしまったり、人工芝についてしまったものを取り除いたりと本当に大変です...

 

 

掃除大変だーと言いつつも...フワフワで、個性豊かな換羽の姿は、見るとふと笑ってしまいます。換羽は非常におもしろい時期でもあります。この時期は濡れるのが嫌でプールに近づかない個体が、やっぱり喉が渇いて掃除中にホースの水を飲みに来ます。ホースの水圧で嘴にあたった水が結局体を濡らしています。「結局濡れるんかーい」と思わずツッコミしたくなります。いや、していました。頑張って飲もうとする姿は健気で可愛らしいです。

 

動物達の生きていくための工夫はとても面白いです。

ぜひ今のうちに個性豊かな換羽中のジェンツーペンギンを見に来てください。

ペンギン担当より