公園長ブログ 2019ボルネオツアー③

旧飼育ブログ

みなさん、こんにちは、公園長の瀧川です。
6月29日(土)ボルネオツアー3日目です。本日は一日中、ボートでキナバタンガン川を探索し、

ボルネオゾウとの出会いを狙います。
朝食前に、まずは軽く1時間の早朝クルーズ、昨日のスコールは上がって、天候は回復する?ように見えました。しばらくの間、下流を流しながら、BTCJを始めとしたNPOが支流に設置したオランウータンの吊り橋を見学したり、寝起きのオランウータンやテングザルの跳躍に歓声をあげていると、不意に、背後で、ボトン、ボトンと不気味な水音が、振り向くとあっという間にスコールに囲まれました。そして、ボートは一目散にロッジへ帰還、しばらく雨はやみません。

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、時間がもったいないので、雨が止むまで、ジャングルウォークに行くことになりました。しかし、ここで問題が・・・熱帯雨林のジャングルは100%近い湿度と昆虫天国です。そして、既に皆さんもお気づきかと思うのですが、私は基本、幼虫類、ぬめぬめ類は、全くダメで、特に「山ヒル」のみなさんには、この地球上でまっとうに生きてらっしゃると、重々理解はしているのですが、ものすごい抵抗感をもっています。ガイドさんから「めったに出ないよ」という言葉をいただけるのを期待して、出没状況を質問すると、無情にも「誰かがやられると思ってください」というお言葉が・・、したがって、この日のジャングルウォークは、私にかわって、地球上の全ての生物に心から寛容なアザラシ女子にリポートしていただきます。よろしくお願いします。

 

 

 

 

 
皆様こんにちは!ゴマフアザラシ担当です。
公園長からアザラシ女子なんて素敵な紹介をして頂き、とても光栄です(^^)

今回は私もこのボルネオツアーに参加させて頂き、とても貴重な体験をさせて頂きました。

 

ジャングルウォークでは、キナバタンガン川を一望できる展望台へ向けて出発をしました。

山歩きをするのは初めてだったので、皆さんについていけるか心配でしたが、

日本では見かけないような植物や昆虫に目を奪われているうちに、あっという間に展望台へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展望台から見る景色は、どこまでも広がる豊かな森と川。

そしてこの森にはたくさんの命が育まれているのだな、と改めて感じました。

 

 

 

 

 

行き帰りの道中では、リスや様々な鳥を見つけては、現地のガイドさんや、旭山動物園の坂東園長が教えてくれて、ボルネオの自然を肌で体感することが出来ました。

 

 

 

 

旅行に行くと何かしらトラブルがつきものな私なのですが、今回は現地で移動のための貸し切りバスの中に、自分の帽子を忘れてきてしまい、坂東園長からこのキャップを貸していただきました!m(__)m

でも憧れの坂東園長のキャップをお借りできるなんて、、結果オーライかな^^

 

公園長が心配していた「山ヒル」のお世話には誰もならず、素晴らしい体験が出来ました^^

 

ボルネオは死ぬまでに行きたかった場所で、このツアーは、私の人生の中でとても大きな糧となりました。

まだこれから公園長が紹介してくれると思いますが、ボルネオでたくさんの命と出会ったことで、

茶々丸やもなかへの気持ちとはまた少し違う感覚なのですが、この子たちの未来を守ってあげなければ、という気持ちになりました。私一人じゃ、ちっぽけな力しかないけれど、自分に出来ることを探して実行していきたいと思います。

ボーっと生きてちゃダメですね!

 

 

最後に少し、ジャングルウォークから脱線してしまいますが、

セピロックオランウータンリハビリテーションセンターで素敵な一枚が撮れたので...

 

 

この透き通るような瞳。

この子たちの未来を守りたい、そう心から思った一枚です。

 

以上、アザラシ女子からでした^^

 

 

 

 

 

 

 

さて、昼食後、天候も回復しそうなので、ボートで片道2時間程度の距離の支流を目指します。最近ボルネオゾウの目撃情報があったエリアです。
ガイドさんはスマホで連絡を取り合っているので、目撃地点には一気にボートが集まります。ボートを走らせていると、背後から欧米旅行者用高級ロッジの高性能ボートに次々と追い抜かされていきます。エンジンの性能違うから、なかなか追いつけない!
どうも、かれらはゾウの出没エリアを知っているようで、我々も一目散に彼らの後を追います。

 

 

 

 

 

支流にたどり着き、エンジン音を小さくして奥へ奥へと進んでいくと、やがて、両岸の粘土層にゾウらしき足跡が、どうも川を渡って、左岸のプランテーション沿いに進んでいるようです。あ!ボートが止まっています。あ!茂みに動くものが、ボルネオゾウです。一頭ではありません。左右の茂みが激しく揺れています。あちらこちらで,咆哮が響きます。これは、もしかして、巨大な群れ?実は、この時、私たちは川沿いの熱帯雨林とアブラヤシの畠の境界を進む30頭ほどの群れに遭遇していたのです。そして、驚いたことに、その群れは15頭ほどのメスと15頭ほどの子供、つまり、親子の群れだったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女らはアブラヤシもネピアグラス( 川辺に生えるイネ科の草 で、ゾウが好むとされる)も同じように、精力的に口にしています。ボートはゆっくりと、群れを驚かせないように近づきます。しかし、突然、欧米人を乗せた高性能ボートがエンジン音を響かせてやってきて、移動をはじめようとしていたゾウの近くに舳先を突っ込みました。ゾウは怒ったように声を上げ、上流のほうに駆け出しました。ボートがエンジンをふかし、後を追います。「なんてやつらだ」気がつくと、坂東園長が、狭いボートの上で仁王立ちになって、高性能ボートの方をにらみつけています。いまにも上陸してゾウの盾にでもなりそうな勢いなので、「坂東さん、上陸はだめだよ、危険、危険」といってなだめます。

 

 

 

 

 

 

 

ボートの中からは見えませんが、ネピアグラスの向こうには、まだ、相当数のゾウの気配がします。たくさんの鼻がアブラヤシの葉をもぎとり、幹から地衣類をはぎ取っています。集まってきたボートとともに、再び、ゆっくりと、ゆっくりと、岸に近づきます。
突然、ネピアグラスの茂みの中から、二頭のゾウが川に入りました、1歳ぐらいの子供とお母さんです。母ゾウは、すぐ近くの岸に子供を鼻で押し上げると、森の向こうに消えていきました。すると、次々と、同じような親子がネピアの茂みから川に下り、再び岸に上がっていきます。そこにはゾウの移動を妨げる何かがあるのでしょうか。水路?それとも柵か何かでしょうか。通過する個体は、信じられないことに、全てが親子で、中には2頭の子供を連れた母ゾウもいました。子ゾウは、我々ボートに気が付くと、一瞬、母さんの後ろに隠れますが、母さんに促され、おずおずと川に入っていきます。親たちは我々ボートを怖がっている感じはしません。発信機を首に巻いた個体もいました。それから、30分ぐらいでしょうか、親子の移動は続き、やがて、ゾウの咆哮が遠くなると、群れは遠ざかっていったようでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りのボートで、女将の森井さんは、ゾウがアブラヤシの葉を食べていたことにかなりショックを受けていたようでした。「ゾウは食べるものがなくて、アブラヤシの葉をやむを得ず食べていると思っていた。ゾウが好きなネピアグラスがたくさんあるのに、アブラヤシを選択して食べている。いくらゾウを森に戻しても、また農園にアブラヤシ食べに来ちゃう」実はこのことは、かなり深刻な話で、BCTJは、野生生物の通り道を確保するため、緑の回廊プロジェクトとして、畑や荒廃した土地の購入を進めています。緑の回廊で保護区をつなぎ、プランテーションとゾウの確執を解消しようという取り組みですが、アブラヤシに嗜好性が移っているとすれば、いくら、緑の回廊を整備しても、ゾウが引き続きプランテーションに依存することになってしまいます。
今回見たように、野生の繁殖力は偉大で、条件さえそろえば、多くの命を生み出すことが可能です。だからこそ、この命を育むことができる環境をしっかりと整えてあげることが重要です。この近くには、アブラヤシのプランテーションの中にゾウが自由に通行するのを認めるムランキン農園のような取り組みも始まっています。熱帯雨林の保護が全てではなく、活用できるものを柔軟に取り込んでいく時期に来ているのかもしれません。