自然史博物館の南側に、新しいライオン舎ができました。
まだ、完全に工事は終わっていませんが、そこにはオスのアースとメスのシルクが暮らしています。
そのわきを歩いていると、思いがけず、コンクリートの壁に彼らの力強い咆哮が響き渡ることがあります。
若い彼らは、まだ同居ができておらず、吠えあうことでお互いを確認しているのでしょう。
まだ、ライオンのハヤテが生きてきたころは、夕方になると決まって、ハヤテとオトの夫婦はお互いを確かめるように咆哮していました。
担当獣医は、ライオンはなきかわす動物ではないと言いますが、若い二人の咆哮を聞いていると、
年甲斐もなく胸がきゅんとなってしまいます。
早くお互いを認め合い、素敵な家庭を作ってくれたらと心から願ってやみません。
咆哮といえば、みなさん、テナガザルのピッピたちの鳴き交わしを聞いたことありますか。
のんほいの森に響き渡るその声は、激しくも荘厳な空気をただよわして、森の古からの伝承を語っているようにも思えます。
ボルネオの森では彼らの鳴き交わしをいたるところで聞くことができました。
早朝のジャングル、はるか彼方から聞こえてくる彼らの鳴き交わし、深い深い自然の懐に自分が包まれている感覚がすうーと広がるひと時でした。
ところで先日、ライオン舎の対面にある自然史博物館の学芸員から、
ライオンの咆哮が・・・研究に支障が・・・という泣き言をもらいました。
ライオンたちも新しい環境に慣れようと必死になっています。
ここでは、悪いけど、我慢するのは人間のほうだからね。
長い付き合いになるんだから、早く慣れなさい。
「ハヤテとアース」
昔、ハヤテというライオンがいた
年齢を重ねたハヤテは、筋肉は落ち
その瞳は、緑色にくすんで、いつも眠るように横たわっていた
しかし、一日の終わりには、きっと
空を見上げ、誇り高く、咆哮した
その姿は最後まで高貴で、その咆哮には歴史さえ感じた
あれから1年
今日、アースというライオンに出会った、アースは、若く
張りのある皮膚と、素晴らしい跳躍を予感させるしなやかな筋肉の持ち主だ
その茶色い瞳は、オパール貝のように、光のスペクトルに反応し
私を見ると、威嚇するように、一声咆哮した
でも
アース
まだまだ、君は若いね
君が
あのハヤテのように
誇り高く、なにもかも知り尽くしたいようになるのは
どのくらいの時間がかかるだろう
いつの日にか、君の咆哮に
多くの動物たちが空を見上げるような
そんな時がくることを
心から願ってる