お薬戦略

旧飼育ブログ

私たちヒトは風邪をひいた時や怪我を治したい時、美味しくない薬を飲めと言われたとしても

「これを飲めばよくなるんだから」と理解して、まあ我慢して飲めますよね。多少苦くても、なんとか。

しかし人間といってもこれが乳幼児ともなると、どうでしょう?

まだまだそのことを理解できずに、苦いお薬は嫌がりますよね。

べぇーって出しちゃったりして。嫌がると次の一口はもうありません。

 

これが、動物相手となると、どうでしょう?

ご想像通り、まーったく理解してやくれません。

「あなたのためだから」と理解しろと言う方が難しい!

ただ、そうは言ってもやはり獣医さんに処方してもらったお薬は

きっちり摂ってもらって、お薬の効果を得て体調を改善させてあげたいものです。

ペット用のお薬には肉の風味をつけているものや、甘いシロップのようなものもありますが、

全ての薬でそういうわけにはいかないのが現実です。

 

 

そこで、今回は「お薬戦略」についてのお話です。

動物園にいる動物たちに、いかにお薬をしっかり摂ってもらえるかどうか!?

 

その方法は、『相手をだますこと』。

これに尽きると言っても過言ではないでしょう!!

 

「いつものごはんですよー… 怪しいものは何も入ってないですよー… 」っとしつつ、

しれーっと確実に投薬するのが理想です。

 

具体例としては、肉を塊で飲み込む肉食動物にはエサの馬肉の中心に薬を埋め込む!

魚を丸飲みする動物には、エサのアジの口からお腹に薬を突っ込む!

見た目にもまったく違和感なく、その薬入りのエサを飲み込んでもらって、投薬成功です。

 

難易度が高いのは、知能の高いサルたちです。

少しでも見た目や味に違和感があると、食べてくれない場合があります。

体調が悪くて食欲がなければなおさらです、、一番お薬を飲んでほしい状況なのに(涙)

薬を仕込んだエサを食べてくれるのかくれないのかドギマギしてる飼育員の挙動でもバレたりします。

どうも食べてくれない時には、品を変え与え方を変えあの手この手で、1回でも多く、

ちゃんとお薬を摂ってもらえるように努めています。

 

 

ここで先日のクモザルの投薬の様子を紹介します!

季節の変わり目に体調を崩しやすいのは動物も同じで、

獣医さんに相談し早めにお薬を処方してもらいました。

クモザルの場合は、大好物のふかした芋を潰して丸めた「芋だんご」を作り、

中心にお薬を忍ばせることにしました。

 

薬がこぼれてだんごの外側に付着しないように気を付けます。こんな感じです。↓

 

 

 

 

この時、お薬なしのダミーを作っておくのもポイント◎↓

 

 

 

なぜなら、この4頭の群れのクモザルたちには日頃から手渡しでおやつを与えており、

いつも我先にと競い合って貰いに来ることをいいことに、

若干の味の違和感で怪しまれてもドサクサに紛らわせる戦略の為です。

 

「あれこれちょっとニガ…?あ、また1個くれるの、あ美味しい、まいいや。もう1個おかわり!」

 

薬入りとダミーとわちゃわちゃと、ドサクサに紛れて投薬できました。

結果、成功!

きっと体調がひどく悪化していたり、1頭だけでゆっくり味わって食べられる状況下では

この戦略はうまくいかないだろうと思います。

とりあえずは、今回処方されたお薬は全て摂ってもらえたのでホッとしました。

 

 

だまされてもまだ欲しがる図↓

 

 

 

サルデッキ担当