健康管理、何を指標にしていますか?
普段の動きや食欲、便の状態など、まず思いつくのはそんなところでしょうか。
定期的な体重測定も良い指標になります。でも、見た目では判らないことが沢山です。
実は調子が悪いけど我慢して隠している場合や、見えない部分のどこかが悪くなりかけている場合も。
動物達に直接問診ができればもっと簡単なのでしょうが、生憎ソロモンの指輪を持ち合わせていません。
そんな際に頼もしいのが…じゃーん「血液」!
血液の検査をすれば話せない動物たちの、見えない内臓などの状態が数値で一目瞭然(な事が多い)。
そんな頼もしい検査指標となる血液を採取することを「採血」と言います。
前置きが長くなりましたが、要するに今回は「採血」のお話しです。
私たちヒトも、健康診断や人間ドックで採血されますが、ヒトの場合は腕からが一般的。
動物たちは種類によって姿形も多種多様。
それ以外にも安全面など諸々の理由から、動物種によって採血する箇所が異なってきます。
ご家庭で動物を飼っている方はご存知でしょうが、犬猫ウサギ等は前足からが一般的。
とはいっても、ヒトのように肘の曲がる側からではなくて、肘より遠位の前腕部からです。
動物園でもイヌ科のキツネ、タヌキをはじめとして、ここから採血する動物が多くいます。
一方、家畜の仲間、ウマ、ウシ、ヤギは首の血管から。
さて、チンパンジーなど人に近い類人猿も含めた霊長類は、
ヒトと同じように肘の曲がる側で採血できます。でも、顔から近くて咬まれる危険が!!
という訳で、麻酔を使わない場合、サルの仲間は後ろ足から採ることにしています。
網で捕獲した際など、後ろ足だけ引っ張り出して処置できるので安全です。
ふくらはぎ付近の血管は逃げにくくてGOODです(写真がありませんでした、すみませんm(__)m)。
後ろ足といえば、ペンギンも
捕まえた際に保持し易い姿勢で行えるため、足首や指の間から採っています。
フンボルトペンギンは足首から 起立させて指の間からも◎!
一方、網などで捕まえられることができない動物はどうするのか。
ほとんどは麻酔をかけて動かなくしてからでないと出来ないのですが、
一部の動物は餌を用いたトレーニングで安全に採血を行っています。
ホッキョクグマは柵の間に手を出させて、指の間から。
ライオンは柵の外で尻尾の血管から採血しています。
ホッキョクグマは前足の指の間から 大きな爪に怯まずブスリ!
ライオンは尻尾から 寒いと血管が判り難い!
以前、アジアゾウのアーシャーが妊娠したときは、柵から耳を出させて耳の裏の血管から定期的に採血し、ホルモンの値を調べていました。
採血はあくまで検査のための材料を集めるための作業ですが、
動物種の違いによる工夫やコツがあって、結構楽しいというのが本音です。
あ、でも採血されるのは大嫌い。自分が健康診断で刺されるときは目を逸らします。
獣医師K