こんにちは!
オランウータンなど担当です。
今回は、当園のスマトラオランウータンの“ウラン”についてのお話しです。
ウランは布を格子に結びつけて、自分でハンモックを作ることができます。私が担当になった2018年、ウランが13歳の時には、当たり前にハンモックを作ることができました。どのようにしてウランがハンモック作りをできるようになったのか?幼いころの話を聞いたり、オランウータンの生態について調べたりしてみました。
ウランのハンモック!
野生のオランウータンが住んでいる場所は、高さ50メートルにもなる樹木が生い茂る熱帯雨林です。オランウータンは高い木の上で毎日を過ごしていて、ほとんど木から降りることがないともいわれています。眠る時も木の上!体の大きなオランウータンが眠る時、どのような体制で寝ていると思いますか?
実は、自分でベッドを作って、そこで横になって寝ています!
ベッドの材料は木の枝です。木に登っている状態で枝をポキポキと折り、編み込み、おわん型のベッドを作ります。個体によっては掛け布団のようなものを作ったり、枕を作ったり、それぞれのオリジナルの寝床作りがあるようです。
本来、木の枝でベッドを作るのはチンパンジーやゴリラなどの大型類人猿では日常的な行動のようです。しかし、動物園でベッドを作るチンパンジーやオランウータンはあまり見られません。なぜなのでしょう?
どうやらベッドを作るという行動は、木がふんだんにある野生での生活で、母親が作る様子をしっかり観察していく中で身に付けるもののようです。幼い時にベッド作りの学習の機会がなかった動物園生まれの個体は野生のような複雑なベッドを作ることができません。
チンパンジーでは、元々野生に住んでいて動物園に連れて来られた個体と、動物園で生まれた個体では、作るベッドに違いがあることが報告されています。材料を織り込んでベッドを作る技術を持っているチンパンジーは、大人チンパンジーの中では野生に住んでいたチンパンジーの一部だけだったそうです。
オランウータンについて調査されたことはないようですが、おそらくチンパンジーと近い結果なのではないかと思います。
野生のオランウータンは、生まれてから7年ほど母親と一緒に暮らして生きるすべを身につけていきます。食べ物の探し方、木の上での過ごし方などなど・・。その中でベッドの作り方も学んでいきます。最初は母親が作っているのを横から見て、出来るようになったら自分も手伝ってみて、大きくなったら自分専用のベッドを作ってみて・・という感じでしょうか?複雑なベッド作りが出来るようになるためには、恐らくたくさんの時間や材料が必要になるのではないでしょうか。
話しはウランに戻ります。
ウランは2005年に生まれ、お母さんのウー子に大切に育てられました。
ウー子は1965年頃に、おそらく野生で生まれ、1968年に保護されました。ウー子が何歳くらいまで母親と暮らしていたのかは分かりませんが、7年ほど母親と暮らすオランウータンにとっては、かなり早いお別れをしてしまったのは確かです。オランウータンとして必要な学習をする前に、人間の世界へ連れてこられてしまいました。
ウー子は人間の言葉がわかり人間っぽさがあったり、嫌いな人には攻撃的な一面もあったりしました。手先が器用で、布を棒に結びつけるようなこともしていたそうです。
ウランが2歳の時。母親のウー子と仲良し!(2008年)
そんなウー子に育てられたウランですが、ウランが4歳の時(2009年)にウー子が病気のため死亡しました。ウランにとっても母親との別れは早いものになってしまいました。当時のウランは、キューキューと鳴きながらさびしがったり、ボーっとしたりすることもあったようです。
当時、当園で飼育していたオランウータンはウー子とウランだけで、母親を失って一人ぼっちになってしまったウランを飼育員が母親代りとなって育てることになりました。ウランが退屈しないよう、一緒に遊んだり、ラジオを流したり、フィーダーを作って与えたりしていたそうです。その中で、布を格子に結んでハンモックを作っていました。
その様子をウランは近くでじっと見ていたのでしょう。いつの間にか、布でハンモックを作れるようになっていたようです。
ウランが6歳の時。麻袋のハンモック!
ただ最初はなかなか上手に作ることができず、何度も地面に落ちたことがあったようです。しっかりしたハンモックが作れるようになったのは7~8歳くらいの頃のようです。今ではウランが高い場所から落ちることはありません。
最近のハンモック!
このようにウランが今のようなハンモック作りを習得したのは、オランウータンとして持っていた「安心できるベッドで寝たい」という欲求と、お母さんや飼育員をじっと見て「学習」したことによるものだと考えています。
ウランに子どもが出来たら、どんなベッドで寝るようになるのでしょうか・・?考えてみるだけでワクワクします。(が、私たちはまずウランの子どもができるように頑張りたいと思います・・。)
オランウータンなど担当より