園長ブログ(20) カメは歳をとらない・・かも

高見園長

こんにちは。動植物園長の高見です。

 

動物園では様々な動物を飼育していますが、その動物たちの謎を解き明かすことも大切な役割です。
この度、動物園水族館で飼育されているカメの情報から得られた、世界的な発見が発表されました。「カメは歳をとらないのではないか」という発表です。

カメ1

世界101か国1200以上の動物園水族館でつくられているSpecies360(スピーシーズ360)という組織があります。日本からは22の動物園水族館が参加しており、豊橋総合動植物公園・のんほいパークもそのメンバーです。この組織では、各園館で飼育されている動物の情報を集めたデータベースシステムを運用しています。ZIMS(ジムズ)と呼ばれるこのシステムには、22,000種1300万頭以上の動物に関する膨大なデータが記録されています。今回は、このデータが用いられました。もちろん当園のカメのデータも役立ちました。

Species360と南デンマーク大学はZIMSのデータを利用して、良い環境にいるカメでは老化がゆるやかになったり、みられなかったりする場合があることを明らかにしました。ほとんどの動物では、子を産める年齢になると、成長のために使っていたエネルギーを、子を産み育てるために使うようになり、成長が止まり、傷ついた細胞が修復されなくなっていきます。すなわち、老化が始まります。しかし、カメは子を産める年齢を過ぎても成長が止まりません。いくつになっても細胞の修復機能が無くならない、つまり老化しないのではないかということです。

カメ2

では、カメは老化しないので死なないのかというと、そういうわけではないようです。病気やけがを永遠に避けることは難しいからです。それにしても、歳をとらないというのは、うらやましい話に思えますね。
人間にとって、不老不死は永遠のテーマだと思っていました。しかし、今回の研究成果は、科学の進歩によっていつか実現するかもしれないと思わせてくれるものです。不老不死によって幸せになれるのかは別ですが・・。

いずれにしても、動物園の動物たちが私たちのために役立ってくれることに、感謝したいと思います。

 

 

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より詳しく知りたい方は、以下のSpecies360のプレスリリース文の和訳(一部改変)をご覧ください。

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カメの老化メカニズムに挑む 

動物園・水族館で飼育されている動物に関する世界的なデータベースシステム(ZIMS)の情報をもとにして行われた研究で、カメの老化について新たな発見がありました。国内でZIMSを導入している22の動物園水族館のデータも、この研究に役立てられました。

近年、ヒトは長寿にはなっているものの、加齢と死からは逃れることができません。しかし、カメ目の動物は、ヒトや他の種とは異なるメカニズムにより、加齢に抗っている可能性があることがわかりました。

すべての生物は、加齢に伴って弱り(老化)、やがて死ぬと考えられていましたが、ZIMSを管理運用しているNPOであるSpecies360 と南デンマーク大学の研究者らは、ウミガメやリクガメなどの特定の動物種は、その生息環境を改善すると老化が緩やかになったり、老化がみられなかったりする場合があることを明らかにしました。

Science誌で新たに公開された研究発表によると、研究者らはZIMSのデータを使用して、世界の動物園と水族館で飼育されている52種類のウミガメおよびリクガメを調査することで、ウミガメとリクガメはヒトや他の動物種とは異なり、環境条件の改善に反応して加齢速度が低下する可能性があることを示しました。実際、対象となったウミガメおよびリクガメのほとんどの老化は緩やかで、一部の種では老化がほぼ見られない事例も認められました。52種類のウミガメおよびリクガメのうち、75%の老化は極めて遅く、80%は現代のヒトよりも老化が遅いようです。

「私たちは、これらの種の一部が、野生と比べて、動物園や水族館での生存環境の改善に反応して老化速度を抑制できることを発見しました」と、研究を行ったDalia Conde南デンマーク大学生物学部准教授(Species360 研究推進部門責任者)は語っています。

老化は、細胞や組織の損傷を修復するために使うエネルギーと、遺伝子を次世代に引き継ぐための生殖に使うエネルギーの間のトレードオフとして、性的成熟後に現れると考えられています。 このトレードオフにより、性的成熟を迎えた後は、個体は成長を停止し、老化が始まり、身体の機能が年齢に伴って次第に低下することになります。 このようなトレードオフは避けられないもので、老化は必ず起こると考えられてきました。実際、複数の動物種、特に哺乳類と鳥類でそのことが確認されています。

しかし、ウミガメやリクガメなどにように性的成熟を迎えた後も成長を続ける生物は、細胞損傷の修復にエネルギーを使い続ける可能性があり、加齢による老化を避けることができるのではないかと考えられています。

「ウミガメとリクガメの一部では老化がほとんど見られないという事実がありますが、これは不死という意味ではありません。加齢によって死亡リスクが増えないというだけで、死亡リスクがゼロよりはるかに大きいという点には注目すべきでしょう。要するに、どの個体も病気など避けられない原因によっていずれは死を迎えます」と共同研究者であるFernand Colchere博士は語っています。

 

Science誌の論文はこちら: https://www.science.org/doi/10.1126/science.adc9442

Species360のニュースページ(英文)はこちら:https://www.species360.org/2022/06/new-study-turtles-and-tortoises-challenge-evolutionary-theories-of-ageing-2-2/

Species360のニュースページ(和文)はこちら:https://www.species360.org/japanese-press-release-turtles-and-tortoises-challenge-evolutionary-theories-of-aging/